前回は部活で起こりやすい代表的なケガを紹介しました。
今回は野球における肘のケガについて話をすすめていきます。
ちょうど夏の甲子園大会も開催していますが、投手のメディカルチェックは1993年から始まったと記憶しています。
きっかけは1992年の沖縄水産の投手の肘のケガだったと思います。
ここでも投手という単語が頻繁に出てきます。
野球で肘をケガするリスクが高いのは投手になります。
単純にボールを投げる回数が多いからになります。
しかし、痛める投手・痛めない投手に分かれるのは、なぜか。
理由を探っていきたいと思います。
肘をケガするといっても、肘の内側か外側なのかで痛める組織も変わってきます。
また、年齢によっても特徴が変わってきます。
野球肘は、投球動作の繰り返しによる肘への過剰なストレスが主な原因です。
投球動作は、肘を高速で伸展・屈曲させ、強力な回転力を生み出すため、関節や周辺組織に大きな負担がかかります。
具体的な例は
□オーバーユース(過度な使用) 投球数の増加や連日の投球が、肘の回復時間を奪い、微細な損傷を蓄積させます。成長期の選手では、骨や軟骨が未熟なため、特にリスクが高まります。
□不適切な投球フォーム 体の構造に則した効率のよい動かし方ができていない。
□筋力不足や柔軟性の欠如 前腕や肩周りの筋力不足、体幹の弱さ、または筋肉の柔軟性不足が、肘への負担を増大させます。
□成長期特有の要因 若年層では、骨端線(成長軟骨)が脆弱で、投球によるストレスで損傷しやすい。特に上腕骨内側上顆(肘の内側の骨の出っ張り)が影響を受けやすい。
野球肘は損傷部位によって分類されます。
共通の症状は、投球時や投球後の肘の痛み ・肘の腫れや熱感 ・可動域の制限(特に伸展や屈曲) ・握力低下や腕の疲労感
□内側型(内側側副靭帯損傷や上腕骨内側上顆炎) 最も一般的で、投球時の肘内側の痛みが特徴。内側側副靭帯(UCL)が伸びたり部分断裂したりすることがあり、重症化すると「トミー・ジョン手術」が必要になる場合も。症状は投球時の鋭い痛み、肘内側の圧痛、握力低下など。
□外側型(離断性骨軟骨炎:OCD) 肘の外側(上腕骨小頭)の軟骨や骨が損傷。成長期の選手に多く、投球後の鈍い痛みや肘の引っかかり感、可動域制限が現れる。進行すると関節内遊離体(骨片)が発生し、関節の動きを妨げる。
□後方型(肘頭部ストレス骨折や滑膜ひだ障害) 肘の後方(肘頭)に負担がかかり、骨折や軟部組織の炎症が発生。投球時の伸展動作で痛みが増す。
特に成長期の選手では、痛みが軽度でも放置すると重症化するリスクが高いため、早期対応が重要です。
肘がおかしいなと感じたら、我慢をしないで専門家に相談をしましょう。