前回はアスリートハートについて話を進めました。
アスリートハートは心筋が肥厚している状態になります。
心臓の変化は、運動の種類(持久系か筋力系か)やトレーニングの強度、期間によって異なります。
しかし、肥大型心筋症や拡張型心筋症など病的なものとも似ているので鑑別が必要になります。
通常、アスリートハートは、定期的な健康診断や心臓検査で発見されます。
診断には以下のような検査が用いられます。
□心電図(ECG) 心臓の電気的活動を評価し、アスリートハート特有の変化を確認します。
□心エコー図 心臓の構造や機能を詳細に観察し、心筋の肥厚や心腔の拡大を評価します。
□運動負荷試験 運動中の心臓の反応を調べ、異常がないかを確認します。
□MRI より詳細な心臓の構造評価が必要な場合に使用されます。
重要なのは、アスリートハートと病的状態(例:肥大型心筋症や拡張型心筋症)との鑑別です。
肥大型心筋症は遺伝性の心疾患で、突然死のリスクを伴うため、特に注意が必要です。
アスリートハートの場合は、運動を中止すると心臓の変化が部分的に元に戻る(可逆性)ことが特徴ですが、病的状態では変化が持続します。
また、家族歴、症状(胸痛、失神、呼吸困難など)、心電図や心エコーの異常パターンなども鑑別のポイントとなります。
アスリートハートにもデメリットがあります。
□病的状態との鑑別診断の難しさ 不適切な診断により、アスリートが不必要に競技を制限されたり、逆に重大な心疾患が見逃されたりする可能性があります。
□不整脈のリスク 不整脈が重篤化すると、運動中の失神や、極めてまれですが突然死のリスクにつながる可能性があります。
□過剰なトレーニングによる心臓への負担 長期的には心臓のポンプ機能の低下・疲労感・パフォーマンス低下が生じることがあります。
□運動中止後の心臓変化の持続 心臓の適応が部分的に残存することで、将来的な心疾患リスクがわずかに上昇する可能性が指摘されています。
□心理的・社会的影響 競技継続の可否や健康への不安が、心理的な負担となる可能性があります。
□スクリーニングや検査のコスト 若年アスリートやアマチュア選手にとって、定期的な検査が負担となる場合があります。