野球肘の話から保存療法の治療計画など競技に復帰するまでの道のりを紹介しました。
早期発見をして、重症化させなければ治療は確立しているので一定期間で復帰できる可能性は非常に高いと言えます。
しかし、痛みを我慢してギリギリまでプレーをした結果、重症化してしまい手術が必要になるケースも増えてきています。
その手術にトミー・ジョン手術があります。
以前はプロの選手が行うものでしたが、今では学生も行うようになってきました。
この流れがいいか悪いかは別として、トミー・ジョン手術についての知識もつけていきましょう。
トミージョン手術(正式名称:肘内側側副靭帯再建術、Ulnar Collateral Ligament Reconstruction)は、
肘の内側側副靭帯(UCL)が損傷した際に、靭帯を再建する外科的手術です。
この手術は、1974年にフランク・ジョーブ博士がメジャーリーグの投手トミー・ジョンに対して初めて行い、成功させたことからその名が付きました。
肘を酷使するスポーツ選手は、繰り返しの投球やスイングによりUCLに過剰な負荷がかかり、微細な損傷が蓄積します。
これが進行すると靭帯が伸びたり、部分断裂、完全断裂に至ります。
手術の適応
□UCLの完全断裂または重度の部分断裂
□保存療法(休息、理学療法、PRP注射など)で症状が改善しない場合
□競技復帰を目指すアスリートで、肘の不安定性がパフォーマンスに影響する場合
トミー・ジョン手術は患者自身の腱(自家腱)を使用するのが一般的です。
よく使われるのは前腕の長掌筋腱や膝裏の薄筋腱(ハムストリング腱)です。
手術時間は通常1〜2時間で、全身麻酔または局所麻酔下で行われます。
トミー・ジョン手術の成功には、術後のリハビリが重要になります。
術後
□1〜2週間 肘を固定し、安静を保ちます。軽い可動域訓練を開始。
□2〜6週間 肘の可動域を徐々に広げるストレッチや軽い筋力トレーニングを開始。スプリントや装具を使用。
□2〜4か月 上肢全体の筋力強化や軽い投球動作(非負荷)を開始。
□6〜9か月 徐々に投球練習を再開。軽いキャッチボールから始め、強度を上げていく。
□9〜12か月 競技復帰を目指し、フルスイングや実戦形式の投球練習を行う。
□12〜18か月で通常は完全復帰。
パフォーマンスが手術前のレベルに戻るかは個人差があります。