日常生活で体に痛みがあると不便で仕方がないと思います。
今回は手首に痛みを感じているケースで話を進めていきます。
多くの場合は、手首の使い過ぎによって、痛みが出現することが多いのですが、
時に構造的な問題があって痛みにつながることもあります。
そのひとつに尺骨突き上げ症候群があります。
尺骨突き上げ症候群は、尺骨が橈骨に対して相対的に長すぎる場合)や、手首の構造的異常により、尺骨が手根骨や三角繊維軟骨複合体(TFCC)に過剰な圧力をかけることで発症します。
この圧迫が繰り返されると、軟骨の摩耗、TFCCの損傷、骨の変形、さらには関節炎を引き起こすことがあります。
特に、手首を動かす動作(回内・回外や尺側偏位)で症状が悪化しやすいのが特徴になります。
主な原因
□尺骨プラスバリアント 尺骨が橈骨より長く、手根骨に過剰な圧をかける状態。先天的な骨の長さの違いや、成長期の骨折による尺骨の相対的な延長が原因となることがあります。
□TFCCの損傷 TFCCは手首の安定性を保つ重要な構造ですが、損傷すると尺骨と手根骨の接触が増加し、突き上げが起こりやすくなります。
主な症状
□手首の尺側痛 小指側の痛みが最も一般的で、特に手首を動かすとき(尺側偏位や回内・回外)や物を握る動作で悪化します。
□腫脹や圧痛 尺骨頭周辺に軽い腫れや圧痛が見られることがあります。
□可動域制限 手首の動きが制限され、特に回旋運動が困難になる場合があります。
□クリック音や軋轢音 手首を動かす際に、関節内で音がすることがあります。
□握力低下 痛みやTFCCの損傷により、握力が低下することがあります。
進行すると、月状骨や三角骨の軟骨が摩耗し、骨棘形成や関節炎に発展する可能性があります。
適切な治療を行えば、尺骨突き上げ症候群の症状は多くの場合で改善します。
保存的治療で軽症例は数週間から数ヶ月で回復することが多いですが、
重症例や外科的治療が必要な場合は、リハビリテーションを含め数ヶ月以上の回復期間が必要です。