突然、耳が聞こえなくなってしまう。
そんな経験をしたことがある人は少ないと思いますが、ミュージシャンなど著名人が突発性難聴でという話を
聞いたことはあるかもしれません。
突然の耳鳴りや難聴を主症状とする耳の疾患で、原因不明のものが多く、急性に発症するものに突発性難聴があります。
今回はこの疾患について話を進めていきます。
日本では年間約3万5千人が発症し、片耳に起こることがほとんどです。耳鼻咽喉科の緊急疾患の一つで、早期治療が予後を左右します。
原因
メカニズム突発性難聴の原因は多岐にわたり、約90%が特発性(原因不明)です。
□内耳循環障害 ウイルス感染(ヘルペスなど)や血栓により、内耳の血流が悪化し、蝸牛(かぎゅう)の機能が低下。
□自己免疫反応 免疫異常で内耳が攻撃され、炎症を起こす。
□ストレス・生活習慣 過労や高血圧が血管を収縮させ、発症を誘発。
□その他 メニエール病や腫瘍の初期症状として現れるケースもある。
典型的な症状は、発症後3日以内の急激な難聴で、耳鳴り(キーンという高音)が伴います。
めまいや耳閉塞感も30〜50%でみられ、吐き気まで至る場合があります。
難聴の程度は軽度から全聾まで幅広く、片側性です。放置すると数週間で自然回復する人もいますが、20%は永続的な聴力低下を残します。
日本耳鼻咽喉科学会ガイドラインでは、発症後1週間以内の受診を推奨。
自己判断せず、耳の異変を感じたら即時対応をすることが大切。
治療方法は、治療のゴールは内耳の回復促進で、ステロイドが第一選択になります。
主な方法
□全身ステロイド投与 プレドニゾロン(1日60mg)を1〜2週間。炎症抑制効果で、回復率を70%向上(ランダム化試験より)。
□高圧酸素療法 酸素飽和を高め、血流改善。週5回、20〜30セッション。
□血管拡張薬・ビタミン剤 イソソルビドやメチルコバルアミンを併用し、循環促進。
□ステロイド点耳・局所注射 難治例で鼓膜穿刺注入。
治療期間は2〜4週間で、入院を要する場合もあります。