前回はアキレス腱炎について話を進めていきました。
もうひとつアキレス腱で多いケガといえば、アキレス腱断裂になります。
アキレス腱が切れてしまうのでかなり大変なことですが、思っている以上にアキレス腱断裂をしてしまった人は多いです。
アキレス腱断裂は完全に切れてしまっているものから、部分的に切れているものまであります。
アキレス腱を断裂してしまう時は、スポーツや急激な動き(ちょっと小走り)によって発生することが多く、
特に30~50歳の男性に見られる傾向があります。
アキレス腱は人体で最も強力な腱のひとつなので、簡単に断裂することはありません。
どんなことで断裂するのか。
□急な加速や方向転換の時に起こりやすい。(ジャンプやダッシュなど)
□加齢により腱の柔軟性が低下し、微細な変性が起こっている場合
□硬い地面や不適切な靴での運動
□一部の抗生物質(例:シプロフロキサシン)やステロイドの使用が腱の弱化に関連する場合がある。
アキレス腱が断裂した時の典型的な例と症状
かかと付近で「バチン」と音がしたような感覚とともに鋭い痛みが生じる。
「誰かに蹴られたよう」と表現することが多い。
□つま先立ちが難しくなり、足を引きずるような歩き方になる。
□断裂部位周辺に腫れや内出血が見られる場合がある。
□触診で腱の連続性が途切れているのが確認できることがある。
アキレス腱の断裂は画像を撮らなくても比較的発見しやすいケガになりますが
超音波検査やMRIで腱の損傷程度や位置を詳細に評価することがほとんどです。
また、X線は骨折の有無を確認するために使用される場合もあります。
治療は保存療法と手術療法があります。
□保存療法
メリット 手術のリスク(感染症や神経損傷)が回避できる。
デメリット 再断裂のリスクが手術よりやや高く、回復に時間がかかる場合がある。
□手術療法
メリット 再断裂率が低く、腱の強度が早期に回復しやすい。
デメリット 感染症や傷跡、神経損傷のリスクがある。
適切な治療とリハビリを行えば、多くの患者は日常生活に支障なく復帰可能です。
ただし、スポーツ選手の場合、完全なパフォーマンス回復には時間がかかる場合があります。再断裂のリスク(保存療法で約10~15%、手術で約3~5%)に注意が必要です。